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用語

カップリング(coupling)

2026年6月24日
coupling

カップリングとは

カップリングは、シングルの主題曲に対して、同じ盤に組み合わせて収められたもう一方の曲を指す呼び名である。日本で定着した言い方で、英語では B-side(flip-side)と呼ぶ。A 面に売り出す主題曲(タイアップやリード曲)を置き、もう一曲を組み合わせる、という役割分担から来る言葉である。

呼称は流通表記にも残る。盤面やジャケットのc/w(coupled with)や b/w(backed with)の略号は、主題曲に対する組み合わせ曲を示す。物理のA 面と B 面が盤の 2 つの再生面そのものを指すのに対し、カップリングは「B 面に置かれた曲」のほうを指す。盤の面ではなく、その面に載った一曲の呼び名である。

呼称と役割分担の整理

A 面が売り出す曲、B 面が組み合わせ曲、という序列は、シングルの基本設計として長く通用した。A 面はラジオでの放送や宣伝の主役として選ばれ、もう一方は相対的に注目が薄い二次的な録音に置かれた。カップリングという呼称は、この主従の組み合わせを前提にしている。

ただし主従は固定ではない。ロッド・スチュワートの "Maggie May" は"Reason to Believe" の B 面として出され、ラジオが B 面を回し始めて主役になった。グロリア・ゲイナーの "I Will Survive" も"Substitute" の B 面だったが、人気を受けてレーベルが A 面として出し直した。組み合わせ曲は、宣伝の表に出ないぶん、結果として聴き手が後から見つける曲にもなる。

両 A 面(double A-side)はこの序列とは別の概念である。両 A 面は両方を A 面として出し、どちらにも B 面を割り当てないDay Tripper / We Can Work It Out(1965)はその初期の例で、どちらを主題曲と呼ぶかが定まらない。両 A 面にはカップリングという主従の関係が成立しないため、組み合わせ曲という読み方を当てはめられない。

ノンアルバム曲という慣習

組み合わせ曲には、アルバムに入れない曲(ノンアルバム曲)を置く慣習があった。やがて、アルバム未収録曲やインストゥルメンタル版を組み合わせ曲に回す盤が増える。アルバムでも聴ける別曲を載せる盤もあり、何を組み合わせるかは盤ごとに分かれる。

この慣習の結果として、アルバムにもどこにも入らない、そのとき限りの曲が組み合わせ曲に置かれることがあった。後年の編集盤やリイシューでまとめられる例もあるが、当時の盤では、その曲を聴くにはそのシングルを手に取るしかなかった。盤の品番ジャケットの曲順表記は、どの曲がどのシングルに組み合わされたかの記録でもある。

宣伝の表に出ない組み合わせ曲は、実験や別の表情を試す場にもなった。商業的な要求が主題曲ほど強くかからないぶん、素の作家性や録音時の試行が、組み合わせ曲のほうに残る場面がある。主題曲の影で見落とされやすい音楽が、そこに置かれていることがある。

どう聴くか

まず盤面の表記を読む。ラベルSide A / Side B 表記、ジャケット裏面のトラックリスト、CD シングルなら c/w の表記で、どの曲が主題曲で、どの曲が組み合わせ曲かを確かめる。盤の物理的な面(A/B、穴径、アダプターの要否)そのものはA 面と B 面で読むものとして、ここでは面に載った曲の役割を読む。組み合わせ曲の曲名を控え、手持ちのアルバム曲目と照らしてノンアルバムかどうかを見る。

次に試聴する。主題曲だけで判断せず、B 面の組み合わせ曲も最後まで通す。アルバム未収録の組み合わせ曲は、そのシングルでしか聴けない録音である可能性があり、ノイズや盤の状態とは別に、その曲が聴けること自体が手に取る理由になる。組み合わせ曲を飛ばして評価しない。

曲名や品番が読めたら、手元の別版や版情報サイトで同じ組み合わせの曲順を照らしてよい。同じ主題曲でも、版や地域で組み合わせ曲が差し替わる場合がある。組み合わせの記録は盤面とジャケットの表記を正として読む。

組み合わせ曲を「主題曲のおまけ」としてだけ読むと、そこに置かれた音楽を聴き落とす。主題曲と組み合わせ曲の両方を聴いたうえで、一枚のシングルとして評価すればよい。

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