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用語

カートリッジ(Moving Magnet / MM・Moving Coil / MC)

2026年6月24日
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カートリッジ(Moving Magnet / MM・Moving Coil / MC)とは

カートリッジ(cartridge)は、トーンアーム先端のヘッドシェルに取り付け、針先が拾った溝の動き(変調)を電気信号へ変換する装置である。方式の大きな分類として、ムービング・マグネット(MM)とムービング・コイル(MC)がある。内部の構造、出力レベル、フォノステージの要件、針の交換方法が方式ごとに異なる。

MM と MC の仕組み

MM カートリッジでは、針杆(カンチレバー)の先端付近に小さな永久磁石が取り付けられ、固定されたコイルの間で動く。針が溝を追従すると磁石が振動し、コイルに電流が誘導される。出力が高く、針先ユニットだけ交換しやすいため、家庭用の入門機に多い。

項目MMMC
動く部分永久磁石コイル
固定部分コイル永久磁石
出力の目安2.5〜5 mV0.2〜0.6 mV

MM のほうが出力が高いのは方式上の特徴で、上の mV はあくまで一般的な目安である(製品ごとに幅がある)。MC は MM と逆に磁石が固定されコイルが動く。コイルの巻数を減らして線を細くし、針先の追従精度を上げる設計である。

出力レベルとフォノステージ

カートリッジの出力電圧は、後段のフォノステージ(フォノイコライザー)がどれだけ増幅するかを決める。

方式出力の目安フォノステージの要件
MMおおよそ 2.5〜5 mV増幅 40 dB 前後、入力インピーダンス 47 kΩ 付近が一般的
MC(低出力)おおよそ 0.2〜0.6 mV増幅 55〜65 dB 前後、入力インピーダンスを低く(数十〜数百 Ω)合わせる必要がある
MC(高出力)おおよそ 1〜2.5 mVMM 入力でも再生できる例があるが、負荷の整合は個別に確認が要る

MM 専用のフォノステージに MC カートリッジを接続すると、音量不足や周波数バランスの乱れを招く。逆に MC 用の高増幅回路に MM を載せると、過大な信号で歪みやすくなる。MM / MC 切替や、それぞれ専用入力を持つフォノステージが必要になるのは、この出力とインピーダンスの差による。

MC では出力電圧のばらつきが MM より大きいため、増幅量や負荷(ローディング)を調整できるフォノステージが多い。低出力 MC 向けに、ステップアップ・トランス(信号を MM 入力レベルまで持ち上げる変圧器)で MM 入力へ信号を持ち上げる構成もある。いずれの方式でも、フォノステージが担うRIAA カーブ補正は共通である。

針の交換

MM と MC で、針の扱いは大きく異なる。

MM カートリッジは、針先ユニット(スタイラス・アセンブリ)を本体から外して差し替えられる設計が一般的である。摩耗や損傷時に針だけを交換でき、本体を使い続けられる。

MC カートリッジの針先は、多くの場合ユーザーが交換できない。摩耗や破損時はメーカーの交換と修理サービスへ送る運用になる。針の寿命管理は MM / MC 共通だが、摩耗の疑いが出た段階で針だけ差し替えられる MM のほうが対処しやすい。

いずれの方式でも、摩耗した針先は音質を落とすだけでなく、盤の溝を削りうる針の寿命は、カートリッジの種類より先に、盤を傷めない前提として扱うとよい。

摩耗盤とカートリッジ選び

カートリッジの方式は、盤の物理状態を「直す」ものではない。溝のグローブウェアや傷は不可逆で、針側の選択は、そうした盤をどう読むかに効く。

摩耗した溝では、針先が溝壁を正確に追従しにくくなる。追従不良が続くと摩耗は加速する

MC はコイル側の質量を抑えられる設計が多く、理論上は微細な変調の追従に有利とされる。一方、低出力 MC はフォノステージの増幅量とノイズ性能に依存する。増幅回路のヒス(サーという持続ノイズ)が、静かなパッセージのノイズとして目立つことがある。

摩耗盤の試聴では、クリーニング後も同位置で同じ音が続くかを先に切り分ける。汚れ由来のノイズは清掃で減るが、グローブウェア由来の曇りは残る。フォノステージの不一致は、盤の摩耗とは別の原因で音を濁らせる。カートリッジとフォノステージの組み合わせを確認しないと、盤側の問題と混同しやすい。

アーカイブ用途の再生では、多様な状態の LP を扱う場面で、高コンプライアンスで低い針圧の MM カートリッジと楕円針の組み合わせが実用的な選択として挙げられることがある。MC が盤に優しいか、MM が摩耗盤向きかは、方式名だけで一概には決まらない。摩耗盤では、針先の状態、追従、クリーニングの有無のほうが、方式名より先に効く。

低出力 MC と MM 専用フォノステージの不整合

低出力 MC カートリッジを MM 専用フォノステージで再生すると、増幅不足で本編が薄く、リードインのヒスが目立つ。フォノステージの増幅不足とノイズが、盤のノイズと混ざって聴こえる。カートリッジ方式を変えても、摩耗した溝は戻らない。

盤に合う再生系の見極め方

カートリッジ(MM / MC)は、盤より先に「自分の再生系が何を載せられるか」から確認する。本体や箱、メーカー仕様で MM / MC と出力電圧(mV)を特定する。フォノステージ(アンプ内蔵か外付け)が MM のみか、MC 対応か、MM / MC 切替かを合わせて読む。低出力 MC なのに MM 入力しかない場合、ステップアップ・トランスや MC 対応フォノステージが必要になる。

針の扱いは方式で分岐する。MM なら針の寿命の目安に合わせ、針先ユニット(スタイラス・アセンブリ)の交換を前提に管理してよい。MC なら針交換の手間とコストを織り込み、摩耗が疑われる段階で本体ごとの交換や修理を見込む。中古針や購入時期不明の針は、時間記録がない前提で早めに試聴判断へ移してよい。

盤側は、これから鳴らす一枚の状態から入る。コンディション表記が良い新譜や大切な盤を鳴らす前に、針先の状態を確認する。VG 以下の摩耗が疑われる盤では、クリーニング後にリードインと静かな曲を聴き、ノイズグローブウェア由来の曇りを切り分ける。濁りの原因は盤、針、フォノステージの 3 要素にまたがるため、同時に疑ってよい。

MM と MC の「どちらが上か」より、手元のフォノステージと針の状態が盤に合っているかで決める。カートリッジの交換や針交換はできるが、盤のグローブウェアは戻らないため、どの盤をどの針の状態で鳴らすかを基準に選ぶとよい。

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