ドーナツ盤(donut record)

ドーナツ盤とは
ドーナツ盤(donut record)は、中央のセンター穴が大口径に開いた7 インチ・45 RPM のシングル盤の日本語通称である。直径はおおむね 17.8 センチ(7 インチ)、穴径は約 38 ミリ(1.5 インチ)で、LP の小さな穴と比べて一目で大きい。盤を上から見たとき、穴を菓子のドーナツに見立てた呼び名である。
大口径の穴は意匠ではなく規格に由来する。RCA が 1949 年に 45 RPM 規格を投入したとき、ジュークボックスやレコードチェンジャー(盤を自動で連続再生する機械)が太いスピンドルに盤を素早く落とせるよう、穴を 1.5 インチ(実際の規格値は約 1.504 インチ)に広げた。同じころ Columbia は 33⅓ RPM の LP を小穴で出し、1948 年から 1950 年にかけて両者が市場を争った(いわゆる規格争い)。RCA の投入は 1949 年、その前後の数年が争いの期間にあたる。結果として速度と穴径が住み分け、45 RPM の 7 インチは大穴のまま定着した。
大穴と 45 アダプター
大穴の盤は、現行ターンテーブルの細いスピンドル(LP 用、約 7 ミリ。0.286 インチの小穴に合う径)にそのままでは載らない。間を埋めるのが 45 アダプターである。大別すると 2 つの型がある。
1 つは、盤の穴に放射状の爪ではめ込み、そのまま盤側に残す型である。RCA が広めたこのはめ込み式は、俗にスパイダーと呼ばれる(色は黄や赤が多い)。盤と一体になるので、毎回付け外す手間なく小穴のスピンドルへ載せられる。
もう 1 つは、スピンドルにかぶせて使う円盤状の型で、盤からは独立している。1 枚ずつ載せ替える前提のもので、盤に固定しないぶん複数の盤で使い回せる。
どちらでも音は変わらない。手元のターンテーブルが LP 用の細いスピンドルなら、どちらか一方があれば再生できる。盤ごと付けっぱなしにしたいならスパイダー型、1 個を使い回したいならかぶせ式を選べばよい。穴がもともと太いチェンジャー用スピンドルなら、アダプターは要らない。
1 面 1 曲という形式
ドーナツ盤の中身は、シングルの基本形そのものである。A 面に主題曲、B 面にカップリングや別テイクを載せ、1 面に 1 曲を置く。針を落とせば 1 曲が鳴り、終われば上げる。アルバムのように複数曲を通して聴く設計ではない。
この 1 面 1 曲は、1 曲を立てて届けるシングル文化と対になる。ラジオで流れた 1 曲をそのまま手元に置き、大穴にアダプターを嵌めて針を落とすと、その曲だけが鳴る。アルバムの文脈に埋もれず、1 曲を独立した単位として聴く。短い 1 面という形式が、1 曲を選んで立てる聴き方を後押しする。
なお店頭では、1 面 2 曲以上載せた EP も含めて 7 インチ 45 RPM 盤全般を慣用的に「EP 盤」「ドーナツ盤」と呼ぶことが多い。呼称は直径と穴径を指す用法で、本来の 1 面 1 曲(シングル)と 1 面複数曲(EP)の区別とは別軸である。曲数で切り分けるなら EP を参照すればよい。
ドーナツ盤をどう見るか
ドーナツ盤かどうかは、盤を 1 枚手に取れば判じられる。
まず穴を見る。LP の小穴と違い、指がほぼ通るほど大きければ大穴の 7 インチである。直径が 7 インチで穴が大口径なら、ドーナツ盤とみてよい。ラベルの 45 RPM と、ジャケットの曲数表記もあわせて確かめる。1 面 1 曲ならシングル、1 面 2 曲以上なら EP 寄りである。
次に、手元のターンテーブルに合わせてアダプターを用意する。スピンドルが LP 用の細い軸なら、スパイダー型かかぶせ式のどちらかが要る。
盤質の見方や版の読み方は、ドーナツ盤に固有ではない。ノイズ・反り・溝の摩耗・スピンドルマークは中古 7 インチで出やすいので、状態はコンディション表記で照合する。刻印から版を読むならマトリクス・ランナウト、品番の系列は品番に委ねる。ドーナツ盤として確かめるのは、穴径と 45 アダプターの二点でよい。1 面 1 曲かどうかは EP の記事で曲数から切り分ける。